三浦綾子がテーマとした、人が生まれながらに背負う罪とは~「氷点」

  

年が明けた途端、日本を襲った大寒波。特に北海道では、記録的な寒さとなっています。そんな北海道を題材にした小説は数多くありますが、タイトルだけみるとそんな環境がぴったりはまるのが「氷点」三浦綾子のデビュー作で、最大のヒット作です。

 

ただ、舞台は北海道旭川市で寒そうなタイトルではありますが、この小説は、キリスト教で言うところの「原罪」がテーマ。原罪とは、平たく言うと“人が生まれながらに背負う罪”。キリスト教では、アダムとイブが、神に背いて、知恵の実を食べた事によって知恵をつけたてしまったことゆえ、その罪は子孫である人類全体に影響を及ぼしている考えです。

 

おおまかなあらすじは、昭和21年(1946年)、旭川市在住の医師辻口啓造は、妻の夏枝が村井靖夫と密会中に、佐石土雄によって3歳の娘ルリ子を殺される不幸に遭います。ルリ子の代わりに女の子が欲しいとねだる夏枝に対し啓造は、夏枝への復讐のために、殺人犯佐石の娘とされる幼い女の子をそれとは知らせずに引き取り、夏枝に育てさせます。陽子と名付けられ、夏枝の愛情を受けて明るく素直に育ちます。陽子が小学1年生になったある日、夏枝は書斎で啓造の書きかけの手紙を見付け、その内容から陽子が佐石の娘であることを知ってしまうと、もはや陽子に素直な愛情を注ぐことが出来なくなり、給食費を渡さない、答辞を書いた奉書紙を白紙に擦り替えるなどの意地悪をするようになります。一方の陽子は、自分が辻口夫妻の実の娘ではないことを悟り、心に傷を負いながらも明るく生きようとするのです――。

 

タイトルの「氷点」とは、前向きに生きていこうとする陽子の心が、自分の原罪に気づき、凍りついてしまう瞬間と思われます。その瞬間はどのような過程で訪れるのかは、この本を読んでいだだければと思いますが、陽子は、自分が無垢に純粋に正しく生きていても「実娘の殺人の娘」という事実によって「自分の存在そのもの」が周りを傷つけてしまう、生まれながらの原罪を持っていることに絶望するのです。どんな非の打ち所がない人間でさえも原罪を抱えており、逃れられないことを筆者が描きたかったのではないでしょうか。

 

ただ、この小説は絶望で終わらせてはいません。「続・氷点」では、原罪をひとしく持つ人間が生きてゆくにはいったいどうすればいいのか?原罪に対する解決法、「許し」を説いています。「氷点」、「続・氷点」を読んで、自分の生き方を見つめなおしてみるのもよいでしょう。

 


氷点 続・氷点

三浦綾子・著

 

 

「氷点」の舞台、旭川市にある外国樹種見本林はぜひ、訪れてみてください。外国の樹種が日本の寒冷地で育つかどうかを観察するために造られた自然が豊かな森で、立入りは自由です。50種あまりの樹木が伸びやかに広がって、森林を抜けると美瑛川が横たわり、その向こうに大雪山系を望むことができます。三浦綾子文学記念館もこの中にあります。

 


外国樹種見本林

 

所在地:旭川市神楽7条8丁目
駐車場:あり(無料)
アクセス:旭川空港から車で35分。旭川駅から車で10分

 

 

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