永遠に忘れてはならない出来事。一冊すべてが読者からの投稿『戦争中の暮しの記録』

  

8月になると特に話題になること。それは、「戦争」のこと。広島、長崎に原爆が落とされ、8/15の終戦記念日に向け、各メディアが「戦争」についてをトピックスに上げますが、本当はずーっといつ何時でも忘れてはいけないことなのですよね。戦争中のことを書籍や写真集などで読み返そうと毎年思うのですが、どれから手を手をつけていいかがわからない……。それに私が知りたいのは、仰々しい記録ではなく、その時代の人がどんな思いで、何を思い、過ごしてきたこと。それを知るにはやはりこちらが一番良いかとセレクトしてみました。

 

それは、暮し野手帖社から発売の『戦争中の暮しの記録』。この本は、一冊すべてを読者からの投稿のみでまとめた戦争の特集号です。昨年のNHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の中で、唐沢寿明さん演ずる花山伊佐次(暮しの手帖初代編集長・花森安治がモデル)が命を削ってまで推し進めた企画として描かれたのは記憶に新しいでしょう。1967年に本誌で募集され、翌年に『暮しの手帖』に丸ごと一冊これだけという、定期雑誌としては異例の形で出版された体験談集で、1969年8月15日には単行本に形を変え、現在に至るまで売れ続けています。

 

これは、戦争中の、暮しの記録である。その戦争は、一九四一年(昭和十六年)十二月八日にはじまり、一九四五年(昭和二十年)八月十五日に終った。
~中略~
しかし、その戦争のあいだ、ただ黙々と歯をくいしばって生きてきた人たちが、なにに苦しみ、なにを食べ、なにを着、どんなふうに暮してきたか、どんなふうに死んでいったか、どんなふうに生きのびてきたか、それについての、具体的なことは、どの時代の、どこの戦争でもほとんど、残されていない。

その数すくない記録がここにある。

 

花森安治が、一冊の本『戦争中の暮しの記録』の扉に書いたリード文の一部です。戦闘の記録ではなく、全国の読者から寄せられた、戦争時のリアルな体験談139編がそのあとに続くのです。この本の魅力はこういった率直な証言だけではありません。巻頭グラビアとして置かれたのは、燃えている町の見開き写真、これに続いて、校舎が焼け落ちてしまったために、空の下で執り行われている卒業式の写真――。そんなビジュアルで迫るものもあれば、産湯の燃料にも困るなか、予定日より早く産気づいたなどといった切羽詰まったケースが回想など、ハードな内容ながら、ページの構成は当時の《暮しの手帖》どおりの洗練されたエディターシップが読者の注意をうまく誘導するのです。

 

「たとえぼろぼろになっても、この一冊だけは、これからあとに生まれてくる人のために残しておきたい」という思いから作られたこの記録、ぜひこの夏に目にしてみてください。

 


 

戦争中の暮しの記録

 

著者/編集:暮しの手帖社
出版社:暮しの手帖社
発行形態:単行本
ページ数:290p

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